こんにちは。行政書士・社会福祉士の野澤です。
高齢化の影響などにより、成年後見制度を利用する方は増えており、テレビやネットでも成年後見制度に関する情報をご覧になる機会が増えているのではないでしょうか。
実際、最高裁判所の資料によると、成年後見制度の申立件数は、制度が開始した平成12年(2000年)は8,956件でしたが、令和5年には40,717件まで増加しています。
ただ、成年後見制度については「高齢者のための制度かな?」というイメージがあっても、具体的な役割や制度の内容について深く理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、成年後見制度の基礎知識から役割、費用などについてご紹介いたします。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害などにより判断能力をなくしてしまった本人の代わりに、契約や財産管理などお手伝いする制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度では、判断能力がすでに低下している方に対して家庭裁判所が代理人を選任します。ご家族等が候補者を挙げることは可能ですが、最終的に家庭裁判所が選定します。
法定後見人には、被後見人の判断能力の程度に合わせて次の3類型が存在します。
後見
後見とは、判断能力が欠けている方を対象とする制度です。
代理人(成年後見人)は、財産に関するすべての法律行為についての代理権を持ち、日常生活に関する行為以外のすべての行為について取消権や同意権も有します。
保佐
保佐とは、判断能力が著しく不十分な方を対象とする制度です。
代理人(保佐人)は申し立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める一定の法律行為について代理権を持ち、民法13条1項に規定された借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築などの行為については、同意権と取消権を有します。
補助
補助とは、判断能力が不十分な方を対象とする制度です。
代理人(補助人)は、家庭裁判所が審判で定める一定の法律行為について、代理権、取消権、同意権を有します。本人がある程度判断能力を有しているため、補助人の権限の及ぶ範囲は狭くなっています。
このように法定後見制度は、判断能力の程度に合わせて、ご本人の自己決定を侵害しないよう段階が設けられています。
任意後制度
任意後見人は、判断能力が低下する前に本人が選んで契約します。本人の判断能力が低下した場合は、家庭裁判所が任意後見人が行う事務を監督するために、後見監督人を選任したうえで、サポートが開始されます。
任意後見人が持つ代理権の範囲は、当人同士の契約である程度自由に定められます。ただし、法定後見とは異なり、同意権や取消権を付与することはできません。
成年後見人の業務内容
成年後見人の業務は、財産管理、身上監護、職務内容の報告の3つに分かれます。
財産管理
預貯金や現金の管理、資産の管理や処分、税金の申告と納税、年金の申請や受取、遺産分割協議への参加、契約の締結や取り消しなどを行います。
身上監護(しんじょうかんご)
身上監護(しんじょうかんご)とは、ご本人の生活を維持するための仕事や療養看護に関する契約等のことです。具体的には、病院での手続きや支払い、医療や介護、福祉サービスの契約、住居の手続きや支払い、郵便物の管理などです。
職務内容の報告
成年後見人は、財産管理と身上保護を適切におこなっている旨を説明するため、原則として1年に1回、家庭裁判所に報告書を提出する義務があります。 提出する書類は、「後見等事務報告書」「財産目録」「収支報告書」「預金通帳のコピー」などです。
成年後見人が行わないこと
成年後見人の役割には、食事の世話や実際の介護などの支援は含まれません。そのような支援が必要な方には、支援を提供する介護・福祉事業者などとの契約を成年後見人が行います。
また、成年後見人は、医療行為の同意、身分行為(婚姻、離婚、養子縁組など)、賃貸契約の保証、遺言書作成など、生命や身分にかかわる行為も行いません。
成年後見人の選び方
法定後見制度では、家庭裁判所に提出する申立書に記載された候補者の中から、適任であると判断された人が選ばれます。適任者がいないと判断がされると、候補者以外から別途選任されます。
任意後見制度では、成年被後見人(ご本人)が自ら後見人になってもらう人を選びます。本人から委任されれば原則誰でもなれますが、このときも本人が安心できるという観点から、やはり親族や士業などが選ばれることが多いようです。
なお、民法では、成年後見人になれない人を以下のように規定しています。以下の要件に該当する方は成年後見人になることができません。
・未成年の人
・家庭裁判所で成年後見人・保佐人・補助人などを解任されたことがある人
・自己破産をした人
・成年被後見人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者、その親や子などの直系尊属
・行方不明の人
成年後見人の申し立て方法
法定後見制度では、医師の診断書を取得し、必要書類とともに家庭裁判所に提出します。家庭裁判所で申し立てが受理されると、審判が開始されます。
審判は通常約2〜4カ月で終了し、申立人や法定後見人、被後見人の面接も行われる場合があります。審判が下され、不服がなければ後見が始まります。
任意後見制度では、判断能力が失われる前に任意後見契約を締結し、公正役場で任意後見契約公正証書を作成します。
併せて法務局に後見登記を行い、登記事項証明書を取得します。(正式に後見人である事実を証明するため)
判断能力が低下してから、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てを行い、審判により後見監督人が選任されてから、任意後見が始まります。
なお、法定後見制度では、家庭裁判所の判断で後見監督人が置かれないこともありますが、 任意後見制度では、後見監督人は必ず置かれます。
成年後見人の費用と相場
法定後見制度の報酬額は、家庭裁判所が決定します。管理する財産の総額が1,000万円以下の場合は月額2万円、5,000万円以下は月額3〜4万円、5,000万以上は月額5〜6万円程度が相場です。
不動産の売却など特別な行為を行った場合は、基本報酬に加えて付加報酬が発生します。
なお、家族や親族に報酬を支払う場合は、家庭裁判所に報酬付与の申し立てが必要です。
任意後見制度の報酬額は、家族や親族を選任する場合、自由に決められます。通常は無報酬または月額1〜3万円程度です。
士業などの専門家が後見人になる場合、報酬は法定後見と同様の目安で決定されます。
月額3〜5万円程度が一般的です。
なお、後見監督人に対する報酬が発生します。本人の財産が5,000万円以下なら月額1〜2万円、5,000万円以上の財産であれば月額2.5〜3万円が相場となります。
さいごに
成年後見制度の利用について被後見人(ご本人)の状況や、財産額、ご家族様の状況などを考慮して慎重に選択していく必要があります。成年後見制度についてお悩みの際は、まずは専門家に相談することをおすすめします。当事務所では、相続や遺言作成、成年後見制度の利用などに関するご相談を承っております。少しでも不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。(初回相談料は無料です)
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