\遺言書だけじゃない/考慮しておきたい認知症への備え

こんにちは。ゴールデンウィークが始まりますね。今年は最大9連休だそうです。皆さんご予定はいかがでしょうか?

さて、皆さんはご自身が認知症になった際の備えをされていますか?私も含め「していない」という方は多いのではないでしょうか。ただ現在、65歳以上の6人に1人、85歳以上の2人に1人は認知症と言われており、将来この割合は増加すると見込まれています。

そして認知症等により物事を判断する能力が十分ではなくなった場合、預貯金の管理、不動産等の売却、介護等のサービスや施設入所に関する契約、遺産分割協議等は、行えなくなります。預貯金の口座は凍結され、引き出すことができなくなってしまいます。

そこで今日は、認知症に備えた財産管理・保護の方法についてご紹介します。

目次

任意後見制度(にんいこうけんせいど)

任意後見制度は、成年後見制度(せいねんこうけんせいど)のひとつです。

成年後見制度とは、判断能力の低下した方に代わり、家庭裁判所の監督の下で第三者が財産管理や身上監護(しんじょうかんご※)をする制度です。

※心身や生活状況を把握したり住む場所を決める際の意思決定の支援、医療・介護・福祉に関する手続き

成年後見制度には、ご本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所に申立てる「法定後見制度」と、判断能力があるうちに後見契約を結んでおく「任意後見制度」があります。

法定後見制度の場合、後見人は家庭裁判所が決定します。親族が選ばれる場合もありますが、多くの場合、ご本人も親族も会ったことのない専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士など)が後見人に選ばれます。

一方、任意後見制度の場合、ご本人が信頼できる親族や専門家を後見人に選んで契約をしておくことができます。後見人が行えることも決めておくことができますので、財産の使い方や入所を希望する施設等も決めておくことができます。

また、任意後見契約と併せて、

  • 判断能力が低下する前から、定期的に安否確認をする「見守り契約」
  • 判断能力が低下する前から財産管理を任せる「財産管理契約」
  • 亡くなった後の葬儀・納骨・役所への手続・病院への支払い 遺品整理等を任せる「死後事務委任契約」

を、併せて契約するケースもあります。

家族信託(民事信託)

家族信託とは、自分の不動産や預貯金・有価証券等の財産の管理や運用を、ご家族や信頼できる方に託す契約です。 財産の名義はご家族となりますが、財産から生じる収益等はご自分に残すことができます。

 任意後見と異なり、ご本人が認知症等になる前から、ご家族が財産の管理・運用をすることができます。また、任意後見契約よりも、財産の管理・運用を柔軟に行うことができるというメリットもあります。

更に、ご本人が亡くなられた後、財産を誰に継いでもらうかについても決めておく遺言書的な効果も加えることができます。(最初に継いだ方が亡くなられた後、次に継ぐ方も決めておくことができます)一方、施設等の契約(身上監護)はできません。 

任意後見と家族信託の違い

次に、家族信託と任意後見制度の違いを見ていきます。

開始時期

【家族信託】契約締結時から

【任意後見】判断能力が低下し、親族等が家庭裁判所に申し立て、後見監督人が選任された時から

不動産の処分

【家族信託】信託契約内容の範囲内での管理・処分が可能

【任意後見】合理的理由が認められると、家庭裁判所や後見監督人の同意なしに処分可能

監督機関

【家族信託】契約で信託監督人を定めることが可能(必須ではない)

【任意後見】家庭裁判所で専任された任意後見監督人(司法書士や弁護士等の専門家)と家庭裁判所(必須)

初期費用

【家族信託】専門家への報酬(信託財産の1%程)、そのほか公正証書作成費用など

【任意後見】申立手数料2万円程、専門家へ依頼した場合の報酬10~20万円程

月額費用

【家族信託】原則なし

【任意後見】任意後見人等への報酬月2~6万円(家庭裁判所が決定)

終了までの期間

【家族信託】契約内容や委託者と受益者の合意によって終了が可能

【任意後見】通常、認知症等から回復した時点まで。実質的にはご本人が亡くなるまで。

それぞれのメリットとデメリット

任意後見のメリットデメリット

ご本人の代理人となり、身上監護や法律行為の取り消しができるので、様々な手続きや詐欺被害の回避ができます。裁判所の管理の下で行われるためトラブルに発展する可能性は低いですが、財産運用などの自由度は低く、遺言的機能は持たせられません。また後見人等への月額費用が掛かります。

家族信託のメリットデメリット

契約内容を工夫することで自由な財産管理が可能で、遺言的機能を持たせることもできますが、ご本人の代理人として、身上監護や法律行為の取り消しはできず、委託者と受託者の2者間での契約であることから、他の親族間でのトラブルに発展することもあります。

さいごに

いかがでしたか?
どちらが良いかはケースバイケースで変わってきますし、遺言書や財産管理契約等と組み合わせることで、デメリットを補える場合もあります。「人生100年時代」と呼ばれている今、誰しもが認知症になる可能性があることを想定して対策することが大切です。当事務所でご相談いただくことも可能ですのでお気軽にご相談ください。

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野澤遼太行政書士事務所
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