【有効性と変更のポイント】成年被後見人になったら遺言書はどうなる?

こんにちは。行政書士・社会福祉士の野澤です。
遺言書を作成した後に、予期せぬ事情で成年被後見人になってしまうことがあります。

このような場合、遺言書が適切に効力を持ち続けるのか、その内容が変更される可能性はあるのかといった点で、不安を抱く方も多いのではないでしょうか。

遺言書は、自分の意思を明確に伝えるための重要な手段であるため、その効力がどのように影響を受けるかを理解しておくことが重要です。

そこで今回は、遺言書を作成した後に成年被後見人になった場合の遺言書の有効性や、変更の可否について詳しくご紹介いたします。

成年後見制度がどのように関係するのか、その影響を知ることで、より安心して遺言書を準備し、将来に備えるための参考にしていただければ幸いです。

目次

成年後見人(せいねんひこうけんにん)とは

成年被後見人(以下被後見人)とは、知的障害や精神障害、認知症などの理由によって事理を弁識する能力が常に欠如していると判断され、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人を指します(民法7条、8条)。

「事理を弁識する能力」とは、物事を正しく判断したり、有効な意思表示を行ったりする能力のことです。

被後見人には、その人に代わって法律行為を行う成年後見人という代理人がつきます。成年後見人は家庭裁判所が選任します。
弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門家が成年後見人になるケースが多いです。

遺言書は有効

被後見人でも、後見開始前に作成した遺言書であれば基本的には有効です。

また、被後見人になった後でも、以下の条件を満たせば、有効な遺言書を作成することができます。

①成年被後見人が、遺言作成時において事理を弁識する能力を一時回復していること
②医師2名以上の立会があること
③立ち会った医師が、成年被後見人が遺言作成時に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、押印すること

ただし、一度後見開始の審判がされた被後見人が、上記の条件を満たすことはまれで、一般的には難しいと考えた方がよいでしょう。

なお、成年後見人は身分行為を代理して行うことができないため、被後見人の代わりに遺言書を作成したり書き直すことはできません。

遺言能力の有無がポイント

障害や認知症などの予期せぬ事情で、理事弁識能力が不十分と家庭裁判所が判断した方を「被保佐人(ひほさにん)」、「被補助人(ひほじょにん)」と呼びます。

被保佐人や被補助人は、事理弁識能力が不十分ではあるものの、被後見人のように欠けている状態とまではいえません。
したがって、被保佐人及び被補助人は、満15歳に達していて、かつ、遺言作成時に遺言を作成するのに必要な理事弁識能力(遺言能力)を有していれば、単独で有効に遺言を作成することができます。

同じく、認知症の診断を受けた方も、遺言作成時に遺言能力があれば有効に遺言を作成できます。

ただし、このように遺言能力の有無に疑問が生じやすい方は、遺言能力の有無を巡る後日の争いを防止するため、遺言の方式は公正証書遺言によることが望ましいでしょう。

公正証書遺言は、公務員である公証人に作成してもらう遺言です。公証人が遺言能力の有無を判断して作成するため、作成時に遺言能力があった証拠となります。

さいごに

認知症患者や被後見人などになることは、誰にでも起こりうることで、それを予期することは多くの場合困難です。
そして、そのような状態になると、いろいろな意味で有効に遺言書を作成することが難しくなります。

有効な遺言書を確実に残せるよう、元気なうちに遺言書を作成しておくことをお勧めします。
また、遺言書を作成する際は、証拠能力が高く、相続時の手続きもスムーズな公正証書遺言にしておくことをお勧めします。

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