こんにちは。行政書士・社会福祉士の野澤です。
近年、「終活」が注目される中、エンディングノートに関心を持つ方が増えています。
エンディングノートは、人生の終わりに向けて自分の意思や希望を整理し記録するものですが、エンディングノートに書いた内容は法的に有効なのでしょうか?
今回は、エンディングノートと遺言書の違いや、使い分け方法について詳しく解説します。
エンディングノートとは
エンディングノートとは、もしもの時に備え、自分や家族のために自分の情報をまとめておけるノートのことです。内容や形式の指定はありません。
書店では、さまざまなエンディングノートが販売されていますし、インターネットからエンディングノートの書式をダウンロードすこともできます。
もちろん、普通のノートに記載してもかまいません。
エンディングノートの内容にも特に制限はありません。
資産や延命処置の希望から、携帯のパスワード、ペットの世話についてまで様々な事項を記載できます。
遺言書とは
遺言書とは、自分の死後に、財産や家族の身分関係をどのようにするかの意思を示したものおよび書面のことです。民法で、種類や形式要件が規定されています。
遺言書の種類
自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文と、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言書です。
民法改正によって、平成31年(2019年)1月13日以降は、財産目録のみパソコンや代筆でも作成できるようになりました。
公正証書遺言
公証人が遺言者の意向を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言。
公証役場で作成しますが、病院や施設などに出張してもらうことも可能です。
病気などで手書きが難しい場合でも、公正証書遺言なら作成できます。
秘密証書遺言
本人が遺言書を作成し、署名・押印した後、封筒に入れ封印し、公証役場で存在の証明のみを行ってもらう遺言のことです。
遺言書は封筒へ入れた状態で公証人へ見せるため、公正証書遺言と違い、内容を秘密にすることができます。秘密証書遺言は手続きが終われば、遺言書を自身で保管します。
遺言書の形式要件
自筆証書遺言の要件は以下の通りです。要件を満たさない遺言書は無効となります。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノートに書ける内容には制限がなく、資産、延命処置のこと、携帯のID、ペットの世話など、幅広い事項について記載できます。ただし、エンディングノートには法的な効力はありません。
例えば、親族が疎遠な兄のみで、エンディングノートに「身の回りの世話をしてくれる友人にすべての財産を残したい」と書いても、法的効力がないため、法定相続人である兄が相続権を主張すれば兄が遺産を相続します。
一方、遺言書に同じ内容を記載しておけば、友人がすべての遺産を取得します。
遺言書に書いておくべきこと
では、どのような内容だと、遺言書に記載した方が良いのか、いくつかご紹介します。
①遺産を分ける割合を指定したい
遺言書がなければ、民法に従った相続分(法定相続分)で遺産を分割しますが、遺言書で異なる割合を指定することができます。
例えば、相続人が子2人(長男と次男)の場合、法定相続分は2分の1ずつですが、長男に多めに遺産を渡したい場合は、長男に3分の2、次男に3分の1というように割合を指定できます。
②遺産を分ける方法を指定したい
遺産分割方法にはいくつか種類があり、特定の財産を特定の相続人に取得させる方法があります。
例えば、長男に自宅不動産、次男に預貯金を相続させるといった具体的な分割方法を指定できます。
③相続人(家族など)以外に遺産を渡したい
遺言によって財産を相続人以外に譲り渡すことを遺贈といいます。
例えば、法定相続人ではない親族や友人、知人に財産を譲渡したり、公益法人に寄付することができます。
④遺言書の内容を実行する人を決めたい
遺言の内容を実現することを遺言の執行といい、その人物を遺言執行者として指定できます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する責任を持ちます。
⑤お墓などを管理する人を指定したい
家系図やお墓、位牌、仏壇などは「祭祀財産(さいしざいさん)」といわれます。
この祭祀財産を引き継ぎ、管理する人を「祭祀継承者(さいしけいしょうしゃ)」といいます。
遺言では、祭祀継承者を指定することもできます。
指定された者は系譜や祭具、墳墓などの祭祀財産の所有権を取得します。
祭祀承継者を巡る紛争を避けるためにも、遺言書での指定が望ましいです。
⑥相続人の廃除
相続人から虐待や侮辱等を受けたことを理由に、その人を相続人から排除する意思表示も可能です。
ただし、遺言書に書いただけでは相続権をなくすことはできず、家庭裁判所の認定が必要です。
相続権をなくすという強い効力があるため、裁判所は慎重に判断し、認められるケースは少なくなります。
まとめ
エンディングノートは、幅広い事柄について自分の意思を示すのに有効ですが、法的効力はありません。
そこで、ご紹介したような、財産や身分関係にかかわる意思を示したい場合は、遺言書を作成しておくことをお勧めします。
遺言書とエンディングノートを使い分け、適切な形で自分の意思を示しておくことで、家族や大切な人たちに対する思いを確実に伝えましょう。
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